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社外取締役に誰を迎えるかを決める

社外取締役を経歴から選ぶと、迎えた後も取締役会の議論が変わらないことがあります。期待する役割を絞り、取締役会に足りないものから逆算して選ぶための整理です。

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社外取締役を選ぶ場面では、候補者の経歴から話が始まりがちです。著名な経営者、業界に詳しい人、知人から紹介された人。けれども、誰を迎えるかは、取締役会に何が足りないかから逆算して決めるものです。経歴から入ると、立派な人を迎えたのに取締役会の議論が変わらない、という結果になりやすくなります。

社外取締役は執行に加わらず、限られた時間の会議で経営を見る立場です。その時間で何をしてほしいのかが決まっていないと、候補者の側も引き受けるかどうかを判断できません。本記事では、選任に入る前に社内で整理しておくことを順に扱います。形式上の要件は別に確認するものとして、ここでは扱いません。

取締役会で経営方針を議論している場面をイメージしたシーン
※イメージ画像

社外取締役に何を期待しているのか

「社外の視点が欲しい」という言い方はよく聞かれますが、それだけでは人は選べません。期待している役割は、少なくとも次のように分かれます。

期待する役割

監督

経営陣の判断と業績を、執行から離れた立場で問う役割です。耳の痛い質問ができるかどうかが中心になります。

助言

経営陣がまだ経験していない局面について、自身の経験から選択肢を示す役割です。

専門領域の補完

財務、技術、海外事業など、取締役会の中に知見がない領域を持ち込む役割です。

外との接点

投資家や取引先、海外の株主など、社外の関係者の見方を議論に持ち込む役割です。

図1 社外取締役に期待する役割は、一つではない

一人にすべてを求めると、要件が広がりすぎて誰も当てはまらなくなります。今回迎える一人には、主にどの役割を期待するのかを一つか二つに絞ることが出発点です。役割が違えば、見るべき経歴も、会議での振る舞いへの期待も変わります。

今の取締役会に足りないものから始める

役割を絞るには、現在の取締役会を一度棚卸しする必要があります。構成員の経歴を並べ、どの領域の議論なら深まり、どの領域では誰も執行側に反論できないのかを書き出します。

観点確認する問い見落としやすい点
事業領域今の主力事業と、これから伸ばす事業の両方に通じた人がいるか今の事業に詳しい人ばかりで、次の事業を見られる人がいない
機能財務、技術、人事、リスク管理の議論で、執行側に反論できる人がいるか執行側の説明をそのまま了承している領域が残っている
経営経験事業の立て直しや撤退、買収後の統合といった局面を経験した人がいるか成長局面の経験だけに偏っている
言語と市場英語での取締役会経験や、海外市場での経営経験を持つ人がいるか資料は英語でも、議論が日本市場の前提だけで進んでいる
関係性経営陣と個人的に近い関係にない人がいるか全員が代表の旧知で、反対意見が出にくい

図2 取締役会の棚卸しで確認すること

右の列に当てはまる項目が、迎える人の要件の候補になります。ここで大切なのは、足りないものを一度にすべて埋めようとしないことです。今の経営課題に照らして、どの欠けが議論の質に直接響いているのかを見極め、そこから順に埋めていく方が、選任の理由を社内外に説明しやすくなります。

知っている人から選ぶことの難しさ

社外取締役の候補は、代表や既存の役員の知人から挙がることが少なくありません。信頼できる人を選びたいという理由は自然ですが、個人的な関係がある相手には、会議の場で反対しにくいのも事実です。監督の役割を期待しているのに、候補者が代表の旧知である場合、期待と関係の構造が食い違います。

知人を候補から外すべきだという話ではありません。挙がった候補を、棚卸しで出た要件に照らし、他の候補と同じ基準で比べられるかどうかが分かれ目です。比較の相手がいない選任は、選任というより依頼になります。候補を社外から広く探したい場合は、エグゼクティブサーチを使うという選択肢もあります。

候補者の何を見るのか

経歴の華やかさは、取締役会での働きを保証しません。判断の手がかりとして、事業への近さと、異論を述べてきた経験という二つの軸で候補を並べてみると、期待する役割との相性が見えやすくなります。

異論を述べた経験がある異論を述べた経験が見えない
事業から遠い事業に近い

監督の担い手

事業の細部には入らず、前提そのものを問う役割に向きます。事業の説明に時間を割く準備が要ります。

議論の相手

事業を理解したうえで反論できる人です。ただし競合や取引先との関係など、利害の確認が欠かせません。

名前を借りる選任

対外的な印象は得られても、取締役会の議論はほとんど変わりません。

助言者に近い

実務の知見は深い一方で、経営陣の判断を追認する側に回りやすくなります。

図3 事業への近さと、異論を述べた経験で候補を見る

異論を述べた経験は、経歴書には書かれません。面談では「取締役会や経営会議で、自分の意見が通らなかった場面をどう扱ったか」を具体的に聞くと、議論の仕方が見えてきます。あわせて、候補者が他社で兼ねている役職の状況も確認します。会議の準備や個別の対話にどれだけ時間を割けるかは、期待する役割を果たせるかどうかに直結するためです。

声をかける前に決めておくこと

経営者として経験のある人ほど、引き受けるかどうかを慎重に判断します。そのとき候補者が材料にするのは、会社が何を期待しているのかという説明です。説明が曖昧なまま打診すると、断られるか、期待が食い違ったまま就任することになります。

1

期待する役割を言葉にする

監督か、助言か、専門領域の補完か。主な役割を一つか二つに絞り、その理由とあわせて文章にします。

2

開示できる情報を決める

事業計画、経営課題、取締役会での論点のうち、打診の段階で何を見せるかを決めておきます。

3

関わり方を示す

会議以外にどこまで関与してほしいのか、経営陣と個別に話す機会をどう設けるのかを整理します。

4

働きを確かめる方法を決める

取締役会としての振り返りの中で、社外取締役の働きをどう確かめるかを決めておきます。

図4 打診の前に社内で揃えておくこと

四つ目は後回しにされやすい項目です。けれども、迎えた後に「期待と違った」と感じたとき、それを話し合う枠組みがないと、次の選任の時期まで何も変わりません。振り返りの方法を先に示しておくことは、候補者にとっても、自分に何が求められているかを知る手がかりになります。

次に何をするか

候補者探しに入る前に、次の点について社内の整理ができているかを確かめてください。

  1. 今回迎える一人に期待する役割が、一つか二つに絞られているか。
  2. 取締役会の棚卸しをして、足りない領域が言葉になっているか。
  3. 挙がった候補を、同じ基準で比べられる状態にあるか。
  4. 異論を述べた経験を確かめる質問が、面談のために用意されているか。
  5. 打診の段階で渡す説明と情報が揃っているか。

形式上の要件や手続きは、会社の状況や上場の有無によって異なるため、社内の担当部署や専門家と別に確認してください。そのうえで、誰を迎えるかを決めるのは、取締役会に何を足したいかという問いです。この問いに答えられる状態を作ることが、候補者を探し始める前の準備になります。

本記事は社外取締役の選任に向けた一般的な考え方の整理であり、特定の企業や案件について述べたものではありません。制度上の要件については、別途ご確認ください。

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