企業向け CMO MANDATE

CMO・マーケティング責任者に何を任せるかを決める

CMOの採用は、マーケティングという言葉が社内で何を指すかを揃えるところから始まります。役割の型、任せる範囲、社内の土台、評価の指標を、候補者に会う前に整理します。

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CMOの採用が難しくなるとき、原因は候補者が見つからないことよりも、「マーケティング」という言葉が指す範囲が社内で揃っていないことにある場合が少なくありません。ある役員はブランドを思い浮かべ、別の役員は商談の創出を、さらに別の役員は価格や商品企画を思い浮かべています。

その状態のまま候補者に会うと、面接官ごとに違う人物像で評価が行われ、合議の場で決めきれなくなります。候補者の側も、話す相手によって期待が変わることに気づきます。本記事では、候補者に会う前に「何を任せるか」を決めるための論点を整理します。

経営陣がマーケティングの役割について議論している会議をイメージしたシーン
※イメージ画像

「マーケティング」は、社内で同じものを指しているか

CMOという肩書きは同じでも、担う仕事は会社によって大きく異なります。消費者向けの事業ではブランドと顧客接点が中心になりやすく、企業向けの事業では商談の創出と営業との連携が中心になりやすい傾向があります。成長の途中にある会社では、顧客を獲得する仕組みそのものを作ることが求められる場合もあります。

CMO

ブランド型

事業や商品の見え方を設計し、長い時間をかけて選ばれる理由を積み上げる役割です。

需要創出型

見込み顧客を集め、営業へ渡すまでの流れを設計し、運用する役割です。

事業成長型

獲得から継続利用までを一つの仕組みとして捉え、施策と予算の配分を組み替える役割です。

顧客起点の変革型

顧客理解を起点に、商品企画や価格の決め方まで含めて事業のあり方を見直す役割です。

図1 CMOに期待される役割は、大きく四つの型に分かれる

四つすべてを高い水準で担える人に出会えることは、多くありません。現実的なのは、主として期待する型を一つ、補助として期待する型を一つ決めることです。主と副が決まると、職務経歴のどこを読めばよいかが定まり、面接で確かめるべき経験も絞り込めます。逆にここが曖昧なままだと、どの候補者も「ある面では合うが、別の面では足りない」と評価され、比較ができなくなります。

任せる範囲と、経営が持ち続ける範囲を分ける

型を決めたら、次は境界です。CMOの役割は他部門と重なる部分が多く、境界が決まっていないと、着任後に責任の所在をめぐる議論が続きます。特に整理しておきたいのは次の領域です。

領域決めておくこと決めないと起きやすいこと
価格最終的に誰が決めるか、CMOはどの段階で関わるか値付けをめぐって事業責任者と対立が続く
商品企画企画の初期段階での発言権の有無出来上がった商品を売るだけの役割になる
営業との連携商談の定義と、営業へ渡す基準成果がどちらのものかという議論が繰り返される
顧客データ管理と活用の責任者が誰か施策の効果を誰も検証できない
予算期中に配分を変えられる裁量の範囲都度の稟議で施策の動きが止まる

図2 着任前に境界を決めておきたい領域

すべてをCMOに任せる必要はありません。大切なのは、任せない領域を任せないと明言しておくことです。価格を経営が持ち続けると決めたなら、それは候補者に最初から伝えておきます。着任後に初めて知らされた制約は、権限の縮小として受け取られやすいためです。

社内の土台によって、求める人物は変わる

同じ型の役割を任せる場合でも、社内にどれだけの組織や仕組み、データが既にあるかによって、必要な経験は変わります。何もないところから作る経験と、既にあるものを組み替える経験は、別の能力です。任せる権限の広さと、社内の土台の厚さを掛け合わせると、求める人物像が整理しやすくなります。

任せる権限が広い任せる権限が狭い
社内の土台が薄い社内の土台が厚い

立ち上げを担う人

組織も仕組みもない状態から、人を集め、手順を作り、成果の測り方まで決めた経験が求められます。

変革を担う人

既存の組織や予算配分を組み替え、反対を受けながら方向を変えた経験が求められます。

期待と権限が釣り合いにくい

作ることを求めながら、作るための権限がない状態です。採用の前に、役割の設計を見直す余地があります。

運用を担う人

既にある仕組みを磨く役割です。CMOという肩書きが合うのか、部門責任者として迎えるのかも検討の対象になります。

図3 権限の広さと社内の土台で、求める人物像を分ける

左下の状態は、気づかれないまま採用に進みやすい組み合わせです。期待は大きいのに、人も予算も裁量も伴っていないため、着任した人は早い段階で行き詰まります。候補者に会う前に自社がどこにいるかを確かめ、左下に近いのであれば、権限か期待のどちらかを調整してから進める方が、結果として時間を失わずに済みます。

何で成果を判断するかを先に決める

マーケティングの成果は時間差で現れ、営業や商品の働きと切り分けにくいという性質があります。そのため、着任してから指標を決めようとすると、短い期間で見える数字だけが評価の対象になりがちです。その結果、長い時間をかけて効いてくる取り組みが後回しにされます。

着任直後現状の把握と、課題を言葉にして経営陣と共有できているか。
次の段階体制と施策を再設計し、予算の配分を見直せているか。
その先事業の成果にどう寄与しているかを、他部門と合意した方法で説明できるか。

図4 評価の観点は、時間の流れに沿って重ねて決める

この観点を、取締役会を含めた経営陣で事前に共有しておくことが要点です。代表と取締役会で期待する時間軸が違うと、CMOは二つの方向から異なる評価を受けることになります。候補者にも、どの段階で何を見るかを選考の中で伝えておくと、判断の材料になります。

候補者に会う前に、何を揃えておくか

ここまでの論点を、候補者に会う前の確認として並べると次のようになります。すべてを完全に決める必要はありませんが、決まっていない点があることを社内で自覚しておくだけでも、選考の進み方は変わります。

  1. 期待する役割を、四つの型のうち主と副で言葉にできているか。
  2. 価格・商品企画・営業との連携・顧客データ・予算について、任せる範囲と任せない範囲が決まっているか。
  3. 社内の組織や仕組み、データの現状を、候補者に率直に説明できるか。
  4. 評価の観点と時間軸を、取締役会を含めて共有できているか。
  5. 面接官の間で、求める人物像が揃っているか。

最後の項目が揃わないと、それ以前の整理が選考の場に反映されません。面接の前に一度、関わる役員が集まって型と境界を確認し合う時間を取ることが、CMO採用を前に進めるための現実的な一歩になります。

本記事はCMO・マーケティング責任者の採用に関する一般的な考え方の整理であり、特定の企業や案件について述べたものではありません。

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