企業向け SUCCESSION

後継者を社内から出すか、外から招くか

外部招聘は社内育成の失敗ではありません。どちらが適するかは、事業がこれから何を必要とするかで決まります。判断の材料と、決める順番を整理しました。

約4分で読めます

後継者の話が具体化すると、「社内から出すべきだ」という前提が先に立つことがあります。社内から出せることは望ましい状態ですが、それ自体が目的ではありません。決めるべきなのは、次の数年でこの事業が何を必要とするかが先で、社内か社外かはその後です。

経営陣が事業の方向を検討する場面をイメージしたシーン
※イメージ画像

先に決めるのは「継承するもの」

後継者に引き継ぐものは、役職だけではありません。少なくとも次の四つに分かれ、それぞれ引き継ぎやすさが違います。

引き継ぐもの社内からの継承外部からの招聘
顧客・取引先との関係引き継ぎやすい時間がかかる
社内の信頼と非公式な影響力すでに持っている一から作る必要がある
事業の前提を疑う視点持ちにくい最大の理由になりうる
新しい領域の経験社内にないことが多いそのために招く

図1

上二つが決定的に重要なら社内、下二つが必要なら外部。両方必要な場合は、外部から招いたうえで社内の有力者を副として置く形が現実的な設計になります。

事業モデルを変える必要がある現在の路線を継続する
顧客・社内の関係が個人に紐づく関係が組織に移っている

外部+社内の副

変える必要はあるが、関係の継承も要る。外部から招き、社内の有力者を副に置く形。

外部招聘が向く

前提を疑う視点と新しい領域の経験が要り、関係の継承は障害にならない局面。

社内から出す

継承すべきものが関係そのもの。外部からでは数年かかります。

どちらでも成立する

事業の時間軸と、社内候補が要件を満たすまでの時間を比べて決めます。

図2 社内か外部かは、この二軸のどこにいるかで決まる

外部招聘を選ぶ理由になるもの

以下のいずれかに当てはまる場合、社内育成では時間が足りない可能性があります。

  • 事業モデルを変える必要がある。 既存の前提の中で成果を上げてきた人ほど、その前提を疑いにくい立場にあります。
  • 新しい市場や領域に出る。 その領域の経験が社内にない場合、学習の時間が事業の時間軸に合わないことがあります。
  • 資本構成が変わる。 上場、事業承継、資本提携。外部の関係者への説明が中心的な仕事になるなら、その経験があるかどうかが効きます。
  • 社内候補が複数いて、選べない。 選んだ結果として他の候補が離れる見込みが高い場合、外部から招いて全員を残す方が総合的に有利なことがあります。

社内から出す方が有利な場合

逆に、次の場合は外部招聘の難易度が上がります。

  • 顧客との関係が個人に強く紐づいている事業。引き継ぎに数年かかることがあります。
  • 現場の技術や工程に深い理解が必要で、それが文書化されていない事業。
  • 創業者の存在感が大きく、社内の判断がその人の意向を読むことで動いている組織。外部から来た人が同じ位置に立つのは困難です。
三つ目について

これは外部招聘を諦める理由ではなく、招く前に組織側を変える必要があるという意味です。

意思決定の基準が明文化されていない組織に外部から人を入れると、その人は「基準を知らない人」として扱われ続けます。招聘の前に、何がどう決まっているのかを文書にする作業が要ります。

外部から招くと決めたあとに詰めること

後継者ポジションのサーチは、通常の幹部採用と論点が違います。次の四点は着手前に決めておく必要があります。

現任者の役割と期間引き継ぎ後に残るのか退くのか。残る場合、どの判断に関与し続けるのか。
株主と取締役会の同意外部から招くこと自体について、主要な株主と取締役の同意。
社内候補への説明候補と目されていた人に、いつ、誰が、何を伝えるか。
評価と交代の条件どの時点で何をもって判断するか。合わなかった場合の扱いも含めて。

図3 外部から招くと決めた後、この順で詰める

  1. 現任者の役割と期間。 引き継ぎ後、会長として残るのか、退くのか。残る場合、どの判断に関与し続けるのか。ここが曖昧な案件は候補者側が最も警戒します。
  2. 株主・取締役会の同意。 外部から招くこと自体について、主要な株主と取締役の同意が取れているか。
  3. 社内候補への説明。 候補と目されていた人に、いつ、誰が、何を伝えるか。
  4. 評価と交代の条件。 どの時点で何をもって判断するか。合わなかった場合の扱いも含めて。

一つ目が最も多く問題になります。「しばらくは私も残って支える」という説明は、候補者には「最終決裁権が移らない」と読まれます。支援の意図であっても、権限の所在は文書で分けておく必要があります。

並行して進めるという選択

社内候補の育成と外部サーチは、排他的ではありません。両方を進め、一定の時期に比較して決めるという設計は実際に使われています。

ただし、社内候補にそれを伝えるかどうかは慎重な判断が要ります。伝えずに進めて後で分かった場合、その人は残らないことが多くあります。伝える場合は、比較の基準と時期を明示する必要があります。曖昧なまま「可能性の一つとして外部も見ている」と伝えるのは、最も悪い形です。

判断の順番

  1. 次の数年で、この事業が何を必要とするかを一文で書く。
  2. 引き継ぐもの四つのうち、どれが決定的かを決める。
  3. 社内候補がその要件を満たすまでに必要な時間を見積もる。
  4. 事業の時間軸と比べる。合えば社内、合わなければ外部。
  5. 外部と決めたら、現任者の役割と期間を先に文書にする。

四番目で「合わない」と分かったとき、社内育成をやめる必要はありません。今回の後継は外部から招き、社内候補はその下で経験を積む、という設計もあります。二者択一として扱うと、選択肢が不必要に狭くなります。

本記事は一般的な実務の整理であり、特定の企業や案件について述べたものではありません。

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