経営幹部の候補者が見つからないとき、どこから見直すか
経営幹部の採用が止まったとき、候補者がいないと結論づける前に確かめることがあります。要件、探し先、声のかけ方、選考の進め方の順に、止まっている場所を切り分けるための整理です。
経営幹部の採用がしばらく動かないとき、社内では「この条件に合う人は市場にいない」という説明が出やすくなります。そう結論づけると、次に取れる手は条件を下げるか、探す側を替えるかのどちらかに見えてきます。
ただ、実際に止まっている場所は一つとは限りません。候補者がいないのか、いるのに見えていないのか、見えているのに進まないのかで、見直すべきところはまったく違います。まず止まっている場所を切り分けることが、打ち手を選ぶ前の作業になります。

本当に、候補者がいないのか
難航している採用を振り返ると、止まり方にはいくつかの型があります。どの型に当てはまるかで、手を入れる場所が変わります。複数の型が重なっていることも珍しくありませんが、まずはどれが主因かを決めておくと、議論が散らばりません。
要件が重なりすぎている
望ましい条件がすべて必須として扱われ、それを同時に満たす人の範囲が極端に狭くなっている状態です。
探し先が狭い
同じ業界、同じ職種、同じ規模の会社の中だけを見ていて、近い経験を持つ人が視野に入っていない状態です。
声が届いていない
候補者は見つかっているものの、話を聞いてもらう段階に進まない状態です。
選考の中で止まっている
面談までは進むのに、社内で判断がまとまらない、あるいは候補者の側が離れていく状態です。
図1 採用が止まる場所は、おおむね四つに分かれる
要件のうち、譲れないものはどれか
要件が重なりすぎるのは、関係者それぞれが自分の不安を条件として書き足していくためです。一つひとつはもっともでも、積み上がると誰も満たせない人物像になります。見直すときは、条件を削るかどうかではなく、その条件が着任の時点で必要なのか、社内の支援で補えるのかという二つの軸で並べ直すと整理しやすくなります。
支援体制で補う条件
すぐに必要でも、補佐役や既存の幹部が支えられるなら、候補者に求める必要はありません。
譲れない条件
着任してすぐに必要で、社内に代わりがいないもの。ここに残るものが本来の必須要件です。
外してよい条件
後から身につけられ、社内でも支えられるもの。選考の評価項目から外して構いません。
伸びしろとして見る条件
今は足りなくても、着任後に身につけられるかどうかを面談で確かめる対象にします。
図2 条件を、必要な時期と補えるかどうかで並べ直す
右上に残る条件が少なくなるほど、探せる範囲は広がります。逆に、右上が埋まりすぎているなら、それはポジションの設計そのものに無理がある兆候かもしれません。一人に任せる範囲を分けることも、選択肢として検討に入ります。
どこを探しているかを確かめる
要件に問題がなくても、探し先の想定が狭ければ候補者は見えてきません。特に「同業他社で同じ役職に就いている人」だけを想定していると、その範囲の人は動く理由が少なく、話が進みにくい傾向があります。
| 想定しがちな探し先 | 見落としやすい探し先 | 確かめること |
|---|---|---|
| 同業他社の同じ役職 | 隣接する業界で、似た事業構造を持つ会社 | 業界知識と事業の型の、どちらが本当に必要か |
| 同じ規模の会社の幹部 | 大きな組織で事業の一部を任されている責任者 | 全社を見た経験と、事業を立て直した経験のどちらを求めるか |
| 現在その役職にある人 | その一段下で、実質的に同じ判断をしている人 | 肩書きと、実際に担ってきた判断の範囲 |
| 国内の事業会社 | 外資系企業の日本法人や、海外拠点での経営経験者 | 日英バイリンガルや英語での取締役会経験が活きる場面があるか |
図3 想定しがちな探し先と、見落としやすい探し先
声のかけ方で止まっていないか
候補者が見つかっていても、最初の接点で話が終わってしまうことがあります。この階層の人の多くは、今の仕事に責任を持っていて、転職を考えていません。そうした人に届くのは、条件の良さよりも、この会社が何を解こうとしていて、なぜその人なのかという説明です。
ポジションの説明が社内向けの言葉で書かれていたり、課題がぼかされていたりすると、候補者は判断の材料を持てません。また、初期の接点に意思決定者が関わっていないと、本気度が伝わらず後回しにされがちです。声をかけた相手の反応を振り返り、どの段階で話が途切れているかを確かめることが見直しの出発点になります。
選考の中で止まっていないか
面談までは進むのに決まらない場合、問題は社内の側にあることが多いです。面接官ごとに見ている観点が違い、合議の場で評価がかみ合わない。候補者を見てから要件が変わる。次の連絡までに時間が空き、その間に候補者の関心が薄れる。いずれも、候補者がいないことと区別されずに「難航」とまとめられがちです。過去に面談した候補者について、見送った理由を言葉にして並べてみると、要件の揺れや判断の詰まりが見えてくることがあります。
見直しは、どの順で進めるか
止まっている場所が分かっても、すべてを同時に直そうとすると、何が効いたのか分からなくなります。上流から順に確かめていくと、手戻りが少なくなります。
要件を並べ直す
条件を必要な時期と補えるかどうかで分け、譲れない条件を関係者で合意します。
探し先を広げる
隣接する業界や、肩書きの違う層まで、どこを見るかを言葉にして共有します。
説明を書き直す
解こうとしている課題と、その人に声をかける理由を、候補者の側から読める言葉にします。
選考の進め方を点検する
評価の観点、意思決定者の関わり方、連絡の間隔を確かめ、詰まりがある場所を直します。
図4 上流から順に、止まっている場所を確かめる
条件を下げることや、依頼先を替えることは、こうした見直しの後でも検討できます。先に止まっている場所を特定しておけば、その判断も根拠を持って行えるはずです。
本記事は経営幹部の採用が難航したときの一般的な見直し方の整理であり、特定の企業や案件について述べたものではありません。